メモリーグラフ イメージ

メモリーグラフの特徴

  1. メモリーグラフは、同一構図の写真を撮るという問題を簡単にします。これまでのカメラで定点観測をするには、写真と風景を心的回転により一致させるという難しい作業が必要でしたが、メモリーグラフではファインダー上で写真と風景を直接比較できるため、定点観測が劇的に簡単になります。
  2. メモリーグラフは、同一構図の写真を撮るという問題を楽しくします。同一構図で写真を撮るには、現地の風景を分析して構図を理解した上でシャッターを押す必要があり、これにはゲーム的な楽しさがあります。さらに自分にとっての「聖地」でこれを体験することで、身体性のレベルでコンテンツとの一体感を味わえる楽しさがあります。
  3. メモリーグラフは、新しい写真術を作り出します。過去の写真を引用した現在の写真や、過去の写真に新たな要素を加えた現在の写真など、創作的なリンクに基づく写真アーカイブを生み出す可能性があります。また、みんなで同一構図の写真を撮影することは、単なる記念写真が定点観測という社会貢献になり、そこから新たな文化的運動を生み出していく期待もあります。

なおメモリーグラフは、拡張現実(AR)とは似て非なるものです。写真を重ねるのは、風景の中ではなくカメラのファインダーの上です。たったこれだけの違いが、2つのアプローチの特徴を大きく異なるものとします。ARは風景中に表示された過去の写真の受動的な鑑賞ツールとなる場合が多いのに対し、メモリーグラフは現在の風景を能動的に記録するフィールドワークツールとなります。

メモリーグラフは、人々の記憶を扱うためのプラットフォームとしてのメモリープラットフォームの一つのアプリでもあります。デジタルアーカイブと連携する一つのツールとして、過去の世界と現在の世界とをつなぐ役割を担います。


開発

メモリーグラフは、以下のソフトウェアを用いて構築しています。

  • iOSアプリ・Androidアプリ・Webアプリ: Flutter
  • メモリーグラフサーバ: Omeka S

メンバー

  • プロジェクト統括: 北本 朝展 - ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター/国立情報学研究所
  • アプリ・API開発:池崎 友博

発表

  1. 北本 朝展, 髙橋 彰, 矢野 桂司, 佐藤 弘隆, 河角 直美, 西村 陽子, "メモリーグラフ:同一構図撮影を支援するカメラアプリによるフィールドワークの展開", デジタルアーカイブ学会第8回研究大会, Vol. 7, No. s2, pp. s130-s133, doi:10.24506/jsda.7.s2_s130, 2023年11月
  2. 髙橋 彰, 北本 朝展, 矢野 桂司, 佐藤 弘隆, 河角 直美, "京都の町並み保全・創造に関する地域学習へのメモリーグラフの適用性", 日本建築学会 第22回建築教育シンポジウム 建築教育研究論文報告集, No. 22, pp. 49-56, 2022年11月
  3. 北本 朝展, "メモリーグラフ:景観の時間変化をアーカイブする新しい写真術", デジタルアーカイブ学会第4回研究大会, Vol. 4, No. 2, pp. 124-127, doi:10.24506/jsda.4.2_124, 2020年4月
  4. 北本 朝展, "災害の非可逆性とアーカイブの精神―デジタル台風・東日本大震災デジタルアーカイブ・メモリーグラフの教訓", デジタルアーカイブ・ベーシックス2 災害記録を未来に活かす, 今村文彦 監修/鈴木親彦 責任編集 (編), pp. 169-197, 勉誠出版, ISBN 978-4-585-20282-0, 2019年8月
  5. 北本 朝展, "記憶を重ねる新しい写真術「メモリーグラフ」による古写真の共創型研究", 長崎をめぐる初期写真シンポジウム~オリジナルとデジタルアーカイブ~, 2018年4月 (招待講演)
  6. 北本 朝展, "メモリーグラフ:記憶を重ねる新しい写真術によるアーカイブ活動の可能性", FOSS4G 2016 TOKYO, 2016年11月 (招待講演)
  7. 北本 朝展, "メモリーハンティング(メモハン):写真と時間と人の新たな関係を見出すモバイルアプリ", 長崎大学附属図書館交流会, 2016年2月 (招待講演)
  8. 北本 朝展, "古写真の撮影者になりきるアプリ メモリーハンティング(メモハン)", ジオメディアサミット大阪2015, 2015年9月 (招待講演)
  9. 北本 朝展, "メモリーハンティング:アクティブ・ファインダーに基づく新しい写真文化の創生", 国立国会図書館 意見聴取会, 2015年3月 (招待講演)

支援

メモリーグラフの開発は、ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センターが進めています。この開発にあたっては、以下の研究費の支援も受けました。

  1. デジタル史料批判:エビデンスベース人文情報学のための連結指向型研究基盤, 科学研究費補助金 基盤研究(B), 日本学術振興会 [ No. 16H02920 ] / 研究代表者: 北本 朝展 / 期間: 2016-2018

また、メモリーグラフを活用した調査研究については、DS施設公募型共同研究(ROIS-DS-JOINT)の支援を受けています。

  1. メモリーハンティングを活用した戦後から現在の京都の景観変化に関する研究 -京都市電のデジタル・アーカイブ写真を事例として-, 005RP2017, 高橋 彰, 2017
  2. メモリーハンティングを活用した戦後から現在の京都の景観変化に関する研究-京都市電のデジタル・アーカイブ写真を事例として-, 007RP2018, 高橋 彰, 2018
  3. メモリーグラフを用いた京都の町並み変化に関する地域学習教材に関する研究, 022RP2021, 高橋 彰, 2021
  4. メモリーグラフを用いた京都の町並み変化に関する地域学習教材に関する研究, 023RP2022, 高橋 彰, 2022
  5. メモリーグラフを用いた京都の町並み変化に関する地域学習教材に関する研究, 031RP2023, 高橋 彰, 2023

なお前身のアプリとなるメモリーハンティングに対して受けた支援については、メモリーハンティングとは?をご覧下さい。

メモリーグラフ(メモグラ)インストール